バイオマスボイラーと回収ボイラー。Navia工場の2つの新設ボイラーは同じ建屋に並び立っている。
スペインのCosta Verdeに位置し、かつてCEASA(Celulosas de Asturias S.A.)として知られたこの工場は、現在ENCEグループが所有しています。同工場ではこの数ヶ月、巨額の投資を伴う再活性化プロジェクトが進められてきました。
ENCEグループは、このプロジェクトが完了すれば、Naviaはヨーロッパでもっとも効率の良いパルプ工場になるとの自信を見せています。生産能力は年産30万トンから50万トンに増加し、再生可能な資源から55万 MWh/aの電力を生み出します。それは、76 MWのバイオマスエネルギーに相当します。
「ボイラーを並べて設置すると、建設工事が効率的に行えるだけでなく、グリッド(送電網)に販売できるグリーンエネルギーを生産することで投資利益率を向上させることができるのです。これは、私たちにとって新しいビジネス分野です」と語るのは、 Eduardo Garcia工場長です。
このプロジェクトの立案は5年ほど前に始まりました。「最初は、従来型の計画だったのですが」とGarcia氏は言います。「将来への企業戦略を変えたのです。グリーン発電に関する我々の専門知識を、伝統的な製紙技術と組み合わせることで、当社のエネルギー生産における目標値は大幅に上がりました」。
バッチ式蒸解釜を連続式蒸解釜に替えました。そしてENCEは工場の発生蒸気圧を上げることを決め、ボイラーとタービンを全て入れ替えることにしました。
「ボイラーについては厳しい交渉を行いました。それが最初に決める大型設備でしたからね」とGarcia氏は言います。「アンドリッツは、回収ボイラーに関しては実績が豊富でしたが、バイオマスボイラーについては初めてでした。我々の側は、何年もの間、燃料として難しい材であるユーカリ樹皮に苦労してきたので、バイオマスボイラーにはかなりの経験がありました。その経験を基にアンドリッツの技術を慎重に審査した結果、大丈夫だと確信したのです」。
アンドリッツのBioBoilerはバブリング流動床(BFB)技術によるもので、バイオマスを燃焼させるには適しており、シングルドラム、メンブレンウォール構造を採用しています。
アンドリッツは難しい燃料でも使えるよう、ボイラーの鍵ともいえる炉床を先進的な構造としました。
ENCEの回収設備アップグレード改造のプロジェクトマネージャーだった Florentino Lopez氏は、厳しいスケジュールだったと言います。「契約締結が2007年1月で、BioBoilerのスタートアップは2008年11月でした」。ボイラー建設には問題はありませんでしたが、タービンの納期確保が大変でした。
Lopez氏は、このアンドリッツのボイラーが圧力120 bar、蒸気流量120 t/hで運転されていることに触れ、「最大とまでは行きませんが、大型ボイラーであることは確かです」といいます。
BioBoilerは2008年11月から順調に稼動し続けています。「ボイラーの運転状況はバイオマスの質に左右されますが、この管理が難しい」とLopez氏は言います。「バイオマス燃料の約40%は当工場で出る樹皮ですが、残り60%は外部から調達します。その質をチェックするのは難しく、大きな石や大きすぎる樹皮が混ざっていることもあります」。
Lopez氏は、BioBoilerが最大能力を発揮すれば、年間約40万トンのバイオマスを燃焼することができると見積もっています。「発電するエネルギーの約半分はこの工場で使い、そして、残り半分は国のグリッドに販売できます。これは、重要な収入源となります」。
アンドリッツは薬品回収ボイラー、エバポレーター、そして、ボイラーのアッシュから腐食性の高い塩素とカリウムを取り除くアッシュ再結晶化システム(ARC)も納入しました。
この回収ボイラーの定格は1,800 tds/dですが、フル生産に対応できる柔軟性も持っています。圧力93bar、485℃で運転しており、投入黒液の固形分濃度は75%です(アッシュ分を除く)。「2台のボイラーを同一建屋内に置くことは、技術的にも、経済的にも最良のソリューションでした。給水システム、連続ブローダウン、コンデンセートタンクを共通化できますから」。
2009年1月19日、Navia工場は全面的なシャットダウンに入りました。Lopez氏によると、3月1日の再稼動時には、リカバリーアイランドは完成しており、運転を始めていました。
もっとも、全てがすんなりと運んだわけではありません。
エバポレーターのプロジェクトが大変だったのは、ENCE側が既設機器の再利用を希望したことに起因していました。アンドリッツのプロジェクトマネージャー、 Jeff Brownによると、よくあることですが、既設機器が望ましい場所に設置されていなかったのです。
「2008年末に全ての新設機器のコミッショニングを行いました」とBrownは言います。それから、1月のシャットダウンを待って、既設機器を移動しプラントを完成させたのです。
機器の移動には750トンクレーンが必要でした。「この大きさのレンタルクレーンを持つサプライヤーは、スペイン国内に1社だけでした」とBrownは言います。エバポレーターの効用缶2つと、ストリッピングコラム、大きなサーフェスコンデンサーなど主要機器の移動はわずか2日で終了しました。「すごいと思いました。時計のように正確で、あれ以上の仕事は望めなかったでしょう」。
Lopez氏は、「スケジュールが厳しかったので、物事を堅実に進めてくれる現場担当者が必要でした。アンドリッツは適任者を配置し、しかも彼らは、終始オープンでプロ意識も高いスペシャリストでした」と振り返ります。
「アンドリッツのエバポレーター、ボイラーのプロジェクトチームはいい仕事をしてくれたと思います」と、ENCE Navia工場のプロジェクト・ディレクター、 Cesar Morante氏も評価します。「何が必要かをわきまえていて、完成に向けて率先して仕事をするプロフェッショナルでした」。
多くの設備は2009年1月のシャットダウン前に仮組をすることが出来ましたが、ドライヤーはそれが出来ませんでした。「我々がアンドリッツを選んだ大きな理由の一つがそこにあるのです」とMorante氏は言います。「8~9割の作業をシャットダウン期間中に行わなければならず、綿密な計画を立てる必要がありました。過去に現場での組立を依頼した際うまく行ったので、同社なら大丈夫と思いました」。
Morante氏によると、既設の ドライヤーは、2002年のNavia工場の近代化工事を行った時に設置されました。「このドライヤーの性能にはとても満足していました。機械の信頼性も高く、生産保証も達成されていましたから」。
新設ラインは、世界最高の単位あたり生産量(ドライヤーの幅1mあたりの保証生産量)を達成する能力を持ちます。設計生産量は、1,600 t/d(有効幅1mあたり保証生産量400トン)で、現在トップのブラジル・Aracruz Celulose社の375 t/mを超える見込みです。改造後、Navia工場では既に1,594 admt/dの生産を達成しており、さらに、プロセス最適化が進められています。
「このドライヤープロジェクトにおけるアンドリッツとの協同作業はうまく進みました」とMorante氏は語ります。「彼らは、限られたシャットダウンの間に遅れなく作業を終えました。それは工場側としてはとても重要なことです。さすが建設の経験を積んでいるだけあって、新旧機器の取り合いもよく出来ています」。
ENCEにとっての大きなチャレンジは、シャットダウン期間が短かったため、設備改造後、システムを完全に検証するための時間がなかったことでした。「新設機器の スタートアップはおおよそ計画通りでしたが」とGarcia工場長は言います。「改造箇所は込み入っているうえに、微調整の時間は限られていました。そういう状態でしたから、運転に入ってから調整するような形でしたよ」。
「ちょっとした問題は残っていますが、全体的な設計上の問題はなく、他の設備の生産量とのバランスも取れています。我々の目標は、着実に、安定した状態で生産することですが、それを達成する自信があります」。